おまけ

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 ガウリイが思ったより早く『おあずけ』は解除された。
 店を手伝わされて夜九時にお店を閉めたあと、彼はそのままリナと二階へと上がっていった。
 手伝っている間は客の目もあったため、内輪の話をすることができなかったのと、リナがさりげなくお茶でも飲んでいきなさいよ、と言ったせいでもある。
 お互い想いあっていて、でもその想いが相手にうまく伝わっていなかったため、遠回りしてきたためだろう。溢れ出す想いを止める理由もないのに、無理やり止めておくことなどできなかった。
 リナが鍵を開け室内に入ると、ガウリイも一緒に入り、静かに扉を閉めた。
 そして目の前に今、一番愛しい存在が腕の中にある。

「ん……どうした?」
「あ、うん。そういえば姉ちゃんに連絡してなかったなって思って。結局お店はそのまま続けるし」
「ああ、そうだな。でももう遅いし、明日でもいいだろう?」
「……そうね。でもちょっと喉が渇いたわ」

 リナはガウリイの言葉に頷いた後、ゆっくりと身を起こした。

「ガウリイも飲む?」
「ああ」

 リナは上着を羽織ってキッチンへと行くと、冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターのペットボトルを二本取り出した。
 片手で持って冷蔵庫の扉を閉めるとまたベッドへと戻る。

「はい」
「……サンキュ」
「その間はなに?」
「別に」
「別に、って感じじゃないわ」

 飲みたいと言ったから同じようにミネラルウォーターを持ってきた。なのにどこが気に入らないのか分からないため、リナは少し眉をひそめてもう一度尋ねた。

「別に、ただ……どうせなら一本を二人で、とか。口移しに飲ませてくれる、とか。もうちょっと色気があってもいいんじゃないかなぁと」

 ガウリイが半分期待をこめて嬉しそうにいうのを聞いて、リナは口元の筋肉がひくひくとするのが分かった。

「ざ・け・ん・な、つーの! 口移しなんてしたら生ぬるくなって不味いじゃない! それにこういうのはね――」

 男の癖に妙にロマンチックなガウリイを相手に、リナはどこまでも現実的だった。
 ペットボトルのキャップを力強くあけ、立ったまま腰に手を当ててペットボトルのミネラルウォーターを一気飲みする。

「ぷはーっ。こう飲まなきゃ飲んだ気がしないじゃない!」
「……いや、それはちょっとやりすぎじゃ……」
「うっさい。飲みたいように飲む! これが一番いいの!」

 あくまで自分の姿勢を貫くリナに、ガウリイはそういえばこういうやつだった、と今になって思い出した。
 どうやら今までガウリイの『リナと付き合っていて楽しかった』という記憶は、かなり美化されていたらしい。細かいこういったことは綺麗に忘れ去っていたようだ。

「はは……そうだな。それがリナだよな」
「なんか文句ある?」
「いや……ただ、時間が経った分、違うところもあったけど、やっぱり変わらないところは変わらないんだって」
「あたしはあたしよ。ってか、いくら少し変装していたとはいえ、気づかないなんて薄情よね~。こ~んなことする仲だったのに」

 薄情と言われて、ガウリイは少し胸にチクンと来る。
 しかも何度か体を重ねた深い仲なのに、どうして気づいてくれないのか、と恨みがましい目つきで見られて、ガウリイはぼそりと呟いた。

「だって……」
「なによ」
「違ったんだよなぁ」
「なにがよ?」
「……胸」
「は?」
「胸の大きさがこう……」

 付き合っていた当初はこれくらいだったのに、今はこれくらいだと手でジェスチャーをしてみせる。
 リナの頬がヒクヒクと引きつった。
 トドメとばかりに、「もともと小さいほうだけど、前のほうがもっと小さかったんだよなぁ」と言われて、リナの怒りのゲージは振り切れてしまった。

「んなもんで比べるなあああっ!!」

 リナは手当たり次第近くにあったものを投げながら、『おあずけ』を解除したのは失敗だったかもしれない、と思った。
 それでも、よりを戻さないほうが良かった、と思わないだけ救いがあるかもしれない。
 結局、二人はいつまでもこんな感じなのだろう。


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